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古川柳男色事情走書    南 ツカサ

其の七十:情事の終りに

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  想い人が出来て、あれこれとかき口説き、無事交接に繋げることが出来た後、人はどんな感情を抱き、どんな行動をとるのでしょうか。今回は、そんな情事のあとを詠んだ句を紹介します。

出合茶屋あんまりしない顔で出る

  「出合茶屋」とは現代のラブホテルだと思ってください。そこから出てきたということは、何をしてきたかは一目瞭然。けれど、この句の主人公は澄ましかえった顔で出てきていますね。激しく抱き合ったあとでも、それを感じさせないように振る舞うのが彼の美学なのでしょうか。

横に寝て見りゃたいがいのしまい也

  一目ぼれして片思いしている時は「こいつしかいない!」と思いつめ、人目も憚らず口説きに口説いて、やっと漕ぎつけた交接の場。その最中は夢が叶った喜びに満ちて興奮していましたが、一戦交えてゴロンと横に並んで寝てみれば「こんなもんか」と、白けている様子を描いた句です。こういうタイプの男はヤッてしまったらゲーム終了、みたいな感覚でいるのでしょう。一見情熱的で惹かれそうになりますが、注意が必要です。

朝おきと寝かねる中に美しさ

  情事のあとといえば、やはり美しい余韻が欲しいものです。これは陰間とお客の朝の風景を描写したものでしょうかね。先に起きたお客が陰間の寝顔を見ていると、朝の光に気づいたのか、陰間の瞼がぴくぴくと動きます。起きそうで起きない、眠りに戻りそうで戻らない、むにゃむにゃと言葉にならない寝言のようなことを呟いているのもあどけない、そんな様子を美しいものと見ている視線が優しい一句です。

  さて、今回で「古川柳男色事情走書」は最終回となります。古川柳というと難しいという印象があったかと思いますが、BL句を通して少しでも皆さんに身近に感じていただけたなら幸いです。時代が変わってもBLの脈は変わらずにある、ということですね。それでは、ご愛読ありがとうございました。

コラム「古川柳男色事情走書」著者プロフィール
南 ツカサ(みなみ・つかさ)  Twitter

古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。

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