年増となった陰間は女客の相手もすることを前回ご紹介しました。男客だけを相手にしていればよかった時期から、男客・女客両方を相手にする時期を経て、いよいよトウが立った陰間は女客のみを相手にすることになります。
その悲哀の句を見ていきましょう。
夫を亡くした後家さんは、陰間茶屋の常連とされています。その後家さんの接客をさせる陰間は「一本づかい」すなわち、両刀づかいではなくなった年増陰間だという句です。後家さんともなれば、ある程度年齢を重ねていますので、若い陰間より年をとった陰間の方が好まれたのでしょう。
こちらも先の句と似た内容ですね。年増陰間を「古い釜」と称するところに作者の悪意を感じます。もう男客に相手にされなくなった年増陰間は、後家さんにいいように扱われていると言いたげです。
さて、その後家さんのお相手はなかなか体力が要るものだったようです。男客の相手では、1回か2回絶頂に導けば、それでおしまいでしたが、女客の性欲はそうたやすく満たされてくれません。陰間が絶頂を迎えても、もう1回もう1回と執拗に勝負を挑まれます。陰間も人の子、そう何回も射精できませんし、勃起力も落ちてきます。限度を超えたサービスの要求には逃げるしかなかった模様です。
「みそごい物」とは「こってりした物」のことです。女客の旺盛な性欲に応えるためには、精をつけなければなりません。出来るかぎり持久力をつけようと、食生活にも気を遣わなければならないというのは切ないですよね。精をつけて、いざ接客に向かっても、また吸い取られるのはわかっているのですから。
今回は男色事情ではありませんでしたが、歳をとった陰間の切なさを感じ取ってもらえれば幸いです。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。