人の性癖は様々あります。男が男を愛することも、そのような星の下に生まれたゆえの行為と思えば、なんら恥じることはありません。ただ、性に対しては大らかだった江戸時代でも、あまりハマり過ぎると揶揄の対象になってしまうのが男色の悲しいところです。 でも、そんな目線に負けない!と言わんばかりの古川柳をご紹介しましょう。
他人は悪く言うが俺には最高なんだ!と宣言している陰間好きさんの句です。こうやってはっきり言われると気持ちいいですね。好きなものを好きと言って何が悪いんだ?という精神は、何事につけても大切なものです。
もっともこの句は「受けが男根を受け入れる苦痛に耐えているのを気にせずに自分の快楽だけを追求している」というようにも読めるのですが…。
「尻のしまいをつける」とは、物事を終わらせるという意です。お客が陰間との交わりの愉しさになかなか離してくれない、という句ですね。男色交接に用いる「尻」をひっかけてあることは言うまでもありません。
もちろん何度も交わりを求めるお客もいたでしょうけど、自分好みの陰間を愛おしく思って別れがたい…という思いでいた人もいたことでしょう。
句の作者はちょっと小馬鹿にした目線で作っていますが、この句の後ろにある陰間客のいじらしさを見落としたくないものです。
いいですね、こういう句。「首ったけ」という導入部分が、どれくらい相手を好きかを見事に言い表しています。
女性器はもともと男根を受け入れるように作られていますが、尻穴は本来出すところであり、挿入されるようには出来ていません。でも、愛する者同士では、そんなことは些細なこと。穴が小さくても狭くても、一つになりたいと思う気持ちが、結合への情熱を掻き立てるのです。
LGBTへの理解が広がってきているとはいえ、現代でもまだまだ男色への偏見は根強く残っていますが、「人を愛する気持ち」を大切にしていきたいものですね。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。