陰茎・男根・逸物……男性器を表す言葉もいろいろありますね。英語でも「ペニス」「ディック」などなど。古川柳では、「へのこ」という言葉が一番使われます。これは奈良時代から使われている由緒正しい呼称なんです。また、現在でも使われる「まら」という呼称は、平安時代に登場しています。
今回は男性器にまつわる古川柳を見ていきましょう。
かなり意味がわかりにくい句です。「水揚げ」は男娼が初めて客をとることだと、前回解説しました。「おにをする」は「お若気をする」の略で、男色交接をすることを指します。
では「しなりくなり」とは? これ、柔らかい男根のことを表しているんですね。柔らかい男根って軟弱だと馬鹿にしているのでは……と思うのは、現代の視点。江戸時代では「一、麩。二、かり。三、そり。四、傘。五、赤銅。六、白。七、木。八、太。九、長。十、すぼ」という等級があり、「麩」すなわち柔らかく弾力性に満ちた男根は最上のものとされていたのです(「麩まら」と呼ばれていました)。
この句は、水揚げをするのに最上のモノを持った客をあてがった、という意味です。楼主からすると、最初から売り物に傷をつけられたくはないでしょうからね。
「づない」とは「途方もない」という意味です。つまり、陰間の男根を触って「俺のより大きい」と嘆いている図です。男性が大きさにこだわるのは、今も昔も変わらなかったんですかね。でも、先ほどの等級で見ると「太い」は八位、「長い」は九位。それでも、大きさは男性のアイデンティティなのでしょう。
ちなみに「硬い」ということが自慢の男性もいますが、それは等級でいうと「木」の七位になります。木のようなカチカチよりも、麩のようにふんわりしたものが好まれたんですね。
「提灯」とは老人の男根の異称です。ぶらぶらと萎えて垂れ下がっているところから付けられています。古川柳ってこういうとこ容赦なく意地悪な目線で表現します。「裏門」が肛門であることは言うまでもありません。
男根の句は他にもいろいろありますので、また別の機会にご紹介します。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。