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古川柳男色事情走書    南 ツカサ

其の四十八:毛の処理の事

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  少年期にはツルツルとした陰部も、年頃になると毛が生え始めます。放っておくとモジャモジャとして見苦しいですし、第一不潔でもあります。今回は、そんな毛の処理にまつわる古川柳を見ていきましょう。

へのこぞりぞりかちかちである

  「へのこ」が男根のことであることは大丈夫ですね。一読、ぞりぞりと陰毛を剃ると興奮して勃起してしまった……とも読める句ですが、この「かちかち」は軽石を使った処理のことを指しているのです。
  江戸の時代にも剃刀はありましたから、毛の処理を剃刀だけで終えることは出来ました。でも、それでは毛の先が尖ってしまい、お客の肌をチクチク刺してしまう可能性があります。そこで、軽石を擦り合わせて、その毛先が丸くなるように工夫したんですね。この軽石を擦り合わせる音が「かちかち」というわけです。このひと工夫が陰間の努力ですね。
  軽石の代わりに線香で焼き切るという手法も使われていました。一本一本線香で焼き切るというのもなかなか手間のかかることです。

毛を抜くととんだ大きく見えるなり

  こちらの御仁は剃るのではなく抜いていますね。毛抜きで抜くのも根性いりますが、根こそぎ処理するにはもってこいだったのでしょう。男根が根本までむき出しになりますから、いつもより大きく見える、と喜んでいる様がわかります。やはり男根は大きくありたい…と願うのがいつの世も変わらぬ男子の気持ちなのでしょう。かと思えば次のような句もあります。

虱巾(しらみきん)へ剃ってへのこはすげがない

  毛虱にかかってしまったので、仕方なく毛をそり落とした男子の句です。「すげがない」とは頼りないという意味で、こちらは毛がなくなって男根もしょんぼりしているように見えるという内容ですね。そもそも毛虱にやられているのですから、男根も隆々としているわけはないのですが。

ちんぼこをどうぞしたかときやしやにきき

  「きやしやにきき」とは「華奢に訊き」と変換されますかね。「男根をどうしたの?」と優しく訊ねたということは、この句の主役は陰間でしょうね。陰間が毛のお手入れをするのは当然ですが、お客も陰間への礼儀として綺麗に処理してきたのでしょう。陰間も自分のために手入れをしてきてくれたのが嬉しかったに違いありません。こういうお客にはサービスも良くしたくなったのではないでしょうか。

コラム「古川柳男色事情走書」著者プロフィール
南 ツカサ(みなみ・つかさ)  Twitter

古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。

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