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古川柳男色事情走書    南 ツカサ

其の十三:アナル考

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  男色交接(セックス)のクライマックスは、肛門(アナル)男根(ペニス)を挿入することにあります。肌を合わせ口を吸い身体をまさぐっても、最後の挿入がなければ画竜点睛を欠くというものでしょう。今回は肛門に関する句の紹介です。

裏門は表門よりしまりよし

  一見普通のおうちのことを詠んだ句のように見えます。表門は人の出入りが激しいので開いていることが多く、裏門は家人しか使わないので戸締りをよくしておく、というような。ところがどっこい、そうはいかないのが古川柳。「表門」とは女陰、「裏門」とは肛門のことを指します。つまり、肛門の方が締まりがよい、とずばり言っている句なんです。
  では、どんな肛門が好まれたのでしょうか。以前、男根に等級があると紹介しましたが(其の四:ペニス考参照)、肛門にも等級がありました。男根は十等級だったのに対し、肛門は上中下の三段階に分かれます。
  まず上物は「お尻の肉付きがよく、ふっくらとしていて肌が柔らかく、襞が四十二あるもの」とされていました。通和散などの潤滑剤を使うと、滑らかになって挿入しやすかったそうです。確かに見ているだけで美味しそうなお尻ですよね。
  中の位は、襞が三十八本のもの。上物に比べて、四本違うだけでランクが下がります。いちいち数えたんでしょうかね。でも、上物と比べてもさほど大きな差はないとされていたようです。
  下のクラスになるとボロカスに言われます。「お尻に肉がなく、皮が厚く骨ばっている。襞もなければ潤いもなく、気持ちいいことは一つもない」。襞の数など、努力して増やせるものではないですから、そのように生まれてしまったらどうしようもないですよね。
  一説によると、肛門ももっと細かくランク分けした人もいたようですが(十一ランクに分けていたそうです)、よほど多くの肛門を味わってきた人なのでしょう。人生いろいろ、肛門もいろいろ。

開いたら匂い出したり菊の花

  肛門を「菊門(きくもん)」とも称します。可憐な菊の花に喩えるのが(みやび)ですね。そこから香る匂いは…良いと思う人にはたまらない匂いだったと思われます。

裏門の菊を和尚大事がり

  ここまでくれば解説は不要ですね。菊を愛でるのは和尚さんの楽しみの一つです。花開くまで大事にしてください。

コラム「古川柳男色事情走書」著者プロフィール
南 ツカサ(みなみ・つかさ)  Twitter

古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。

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