今回は「裏門」についてです。この「裏門」がお屋敷などの裏の通用口の意味だけではないことは、すでにお分かりいただけているかと思いますが、念のため説明しておくと、「裏門」とは「菊門」ともいい、ずばり「肛門 」のことです。
一見男同士のタイマン勝負を挑まれているようですね。「放課後、校舎の裏に来い」みたいな。「出やれ」という言葉遣いも荒っぽいです。しかし、懇切丁寧に「尻をおして」と続くのですから、句の意味は一目瞭然。人目のつかないところに行って、ムフフな行為をしようとしているというわけです。素直に甘い言葉で誘えず、乱暴な言葉で口説いたその後は、きっと交接も激しいものだったに違いありません。
「げん」とは「げんさま」の略で、お坊さんのことを指します。色街で使われていた通称のようですね。
この句の「裏門」は肛門そのものというより、陰間のことをいっていると見ていいでしょう。裏門があるということは表門もあるということで、表門は「女陰」すなわち女郎のことです。このお坊さんは男女問わず遊び歩いているものと思われますが、交接の後などは陰間の方はクールだったのでしょうか。でも、商売で相手をしているのですから、そうそう情を濃く持つことは難しいことかと思います。
陰間の末路です。どれだけお客たちにもてはやされても、最期はひっそりと(本来の意味の)裏門から、お寺に担ぎ込まれることしか出来なかった模様です。けれど、そこを敢えて「裏門」というキーワードを使って句を作ってしまうのが古川柳の意地悪な目線なんですね。
幼い時から性技を仕込まれ、歳を経ては男女ともに交接の相手を務め、その挙句がこのような弔われ方というのは、ちょっと切ないです。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。