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古川柳男色事情走書    南 ツカサ

其の四十一:真面目な和尚

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  古川柳で男色といえば、断トツでネタにされるのはお坊さんのことであることは、これまでも見てきたところです。「和尚」という呼称は、僧侶一般を示す言葉になっていますが、本来は「偉いお坊さんの尊称」なんですね。しかし、悪徳僧侶もいるわけで。彼らをひっくるめて「和尚」と呼ぶのは、本当の意味では異なっているんです。
  今回は、真面目な和尚さんの句をご紹介します。

音のせぬように和尚はどらを打ち

  「どら」は「銅鑼」で、大きな円盤を吊るしたものをバチで叩いて音を鳴らす楽器のことです。銅鑼は鐘の一種とされていますので、「鐘をつく」→「金が尽きる」と意味を転じ、放蕩して財産を使い果たすことを指すようになりました。
  銅鑼を打つと大きな音が鳴ります。派手に遊び惚ける和尚は、盛大にジャンジャン音を鳴らして自分の放蕩三昧を隠そうとしませんが、この句の和尚さんはひっそりと遊んでいるのですね。なんともいじらしいではないですか。

お鉢米和尚はみんな釜へ入れ

  「お鉢米」は、いわゆる「お布施」のことで、実際お米そのものの場合もあれば、お金で支払うこともありました。
  古川柳で使われる「釜」は、もう大丈夫ですね。念のために解説しますと、陰間のお尻のことです。
  お寺の収入をみんな陰間につぎ込むのが真面目?と思われるかもしれませんが、お米は釜に入れるもの。正しい使い方なのです。

いい和尚おねばを釜へ出すばかり

  すでに句で「いい和尚」と表現されていますね。
  「おねば」は水を多めに入れて米を炊いた時に出る汁のことで、白くふつふつと熱いそれは……当然「精液」の暗喩です。
  悪事に手を染めるでもなく、賭け事にのめりこむでもなく、陰間遊びだけに専念している和尚は、それはそれで平和な和尚と言えるでしょう。遊び方も、綺麗にこなしそうですしね。下手な遊び方で、陰間と色恋のゴタゴタを起こされたら檀家もたまったものじゃありません。

  厳しい修行をして、女人禁制の戒律を守り、「お釜」だけを楽しみに日々を過ごす和尚さんたち。やはりそこは、真面目ですね、と言ってあげたいものです。

コラム「古川柳男色事情走書」著者プロフィール
南 ツカサ(みなみ・つかさ)  Twitter

古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。

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