「モテる」というのは、単純そうで複雑な主題です。誰かを好ましく思うことは、完全に個人の趣味嗜好であり、一口に「こうすればモテる!」と言えるものではありません。特に、現在では趣味嗜好が細分化されて、単なる美形だからという理由ですぐに「モテ」に繋がるものではないでしょう。
そういう意味でいえば「色男」という言葉は便利ですね。美形の要素も含んでいますが、性格や雰囲気などを全部ひっくるめて「モテ男」となっていることを表現する言葉です。
では、どんな風に「色男」は出来上がるのか見ていきましょう。
女に言い寄られるだけでは色男にはなれません。男女両方の道に通じてこそ粋とされた時代ですから、男子の味も知らなければならないのです。かといって、男色一辺倒になるのも野暮だとされました。男女ともに手玉にとるからこそ色男(ジゴロ)気取りが出来るというものです。
色男が必ずしも攻めとは限らなかったようです。女子にとって好ましい男子は、男性から見ても好ましいもの。ぜひとも一度あの尻を…!と狙う男性も多かった模様です。でも、そこで拒んでは色男の名が廃ります。そして尻を許せば待っているのは「痔」という現実だったのですね。男色交接には「痔」の問題は避けて通れなかったようです。
痔が「生え抜きの病」とは…もう罪作りな若殿ですね、幼少の頃から男心を惑わせて仕方ない存在だったのでしょう。我も我もと若殿のお尻を求める男性たちの姿が浮かびます。
それとも、受けをするのがたまらなく愉悦で止まらない若殿だったのでしょうか。大奥のように「今夜はそちにするぞ」と指名なんかしたりして。痔持ちで交接するのは辛そうですが、その痛みをも凌駕するものがあったのでしょう。いろいろなドラマを想起させてくれる一句です。
「色男金と力はなかりけり」という有名な古川柳がありますが、金や力がなくても色の道には妥協せず、こまめに行動してこそ「色男」でいられるんでしょう。モテない男性陣は、そこをよく考えてみて欲しいものです。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。