「色男」の句については、其の十二・其の五十二でもご紹介してきましたが、今回は、色男が酷い目に遭う句などを選んでみました。色男の人生は楽しいようでも、一歩間違えばうらぶれてしまう可能性を秘めているのです。
色男はもてます。だから、自分好みの男がいるとすぐに手を出し、また相手も応えてしまいます。でも、それゆえに他人の想い人や恋人をやっちゃうこともあるんですね。色男に言い寄られて、ふらっとした男の方も責められるべきですが、そこは恋の不思議なところ。自分の男に手を出した色男をぶちのめすのです。色男も、身に覚えがあるだけに、反撃できなかったのではないでしょうか。
先の句の続きのような句です。あちらこちらで恋の恨みを買っているから、一日に一度ならず二度も危ない目に合いそうになります。寝取られた男の恨みは案外しつこいものですから、色男をつけ狙っているのかもしれません。こうなると色男は、人通りの少ない裏道や闇夜などには、うっかり出歩けなくなりますね。
こちらの句は、色男の魅力に陰りが出てきたものでしょうか。自分が誘いをかければどんな男でも尻を差し出すとうぬぼれていたら、次第にふられるようになりました。なまじ「自分はもてる」と思っているだけに、今をときめく美男子に言い寄っても、素っ気ない態度をとられるばかりです。そして、色男にとってはランクを落したと思う男にすらも相手にされなくなってしまうのでしょう。
色男はちやほやされるので、遊ぶことが楽しくて堪りません。が、働きもせずに色事にかまけていれば、黙っていないのが家族です。放蕩の挙句、とうとう勘当されてしまいました。陰間茶屋に行くお金もなくなり、素人(地もの)を相手にするようになったという句ですが、それでも相手をしてくれる男がいるというのが、「色男」のかろうじての望みですかね。
人間万事塞翁が馬。色男に生まれて、この世を謳歌していても、いつなんどき災難に陥るかわかりません。やはり、最低限の「誠実さ」は持って、色事には臨みたいものですね。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。