このコラムで紹介する男色古川柳ではお坊さんのことが多いですが、これは女色厳禁の戒を持つ職業であったからという理由があります。あと、僧侶の世界では男色が許容される歴史があったことも挙げられますね。文献にも「男色の客は、士民もあれども僧侶を専らとする」と記されています。
根っからの男好きなら問題ないのですが、中には女人の代替として男色を行うお坊さんもいたようです。女人の代わりに男子を抱くのですから、その行為には多少の勘違い愛撫もあった模様です。
「くじる」とは陰部に指を挿入して愛撫することです。女人であれば、愛液が自然に分泌されて快楽の一種を引き起こすものですが、陰間の場合は肛門。前立腺を開発すれば、男子でも絶頂に達すると言われていますが、そもそも肛門への挿入が必須です。江戸時代のラブローション「通和散」を用いるのは、男根の挿入直前ですから、前戯の段階では肛門は乾いた状態にあります。そこに無理やり指を挿入されたのでは、陰間もたまったものじゃありませんね。女人と同じように振る舞う和尚が「大馬鹿者(大だわけ)」と言われるのももっともなことです。
この句ではもう一歩進んでますね。指一本でも乾いた肛門へ挿れるのは大変なのに、二本目となると、指を挿入しようとする和尚の方も苦労したものと推測されます。そこで、自分がやっていることが正しいのか気づきましょうよ、と言いたいところですが、女人相手の時には悦ばれたので、和尚にとっては精一杯の「誠意」なのでしょう。指二本を歯を食いしばって受け入れる陰間に同情を禁じ得ません。
「四ツ目」とは、大人淫具を売っていた「四ツ目屋」で売っている媚薬のことです。「長命丸」「女悦丸」といった商品がありました。しかし、これらは女人に使用してこそ効果があるもの。陰間に用いたところで、だから?という代物です。きちんと効用書を読んで、使用してもらいたいものです。
馬鹿和尚たちの実態をご紹介してきましたが、本当は女人を抱きたいのに陰間を抱かざるを得ない…という和尚たちのけなげさを感じる句たちでもあります。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。