江戸時代は現代よりも男色が盛んでした。というよりも、男色に偏見がなかった、というべきでしょうか。僧侶の世界では女色が禁止されていたこともあって、平安時代から男色を行う習慣がありましたし、武士の世界でも戦国の時代から主従関係を強固にするための行為として認知されていました。それが、庶民の間にも文化として受け入れられていったということなのでしょう。
とはいえ、やはり女の方が好き、という通常男子の方が多かったことに変わりありません。しかし、通常男子も本当に女にしか興味は向かなかったのでしょうか?今回はそのあたりの古川柳を見ていきましょう。
これはうっかりさんの句ですね。芳町が男娼の街だと知らずに出掛けて行きました。現代なら、新宿二丁目に足を踏み入れたといったところでしょうか。芳町の実態を知らない客は、行ってみて初めて男色の世界を知ったことと思われます。さて、その後の彼は男色に目覚めたんでしょうかね…?
普段は女一辺倒の男が、酔っ払った勢いで陰間を買いました。男色を「ありえない」と思っていたら、そんな行為には出ないでしょう。無意識のうちに男を抱きたいという願望があり、酔った時にそれが露見したと思われます。
こちらもお酒の力を借りて、コトに及んだ句です。現代より男色に寛容な時代だったとはいえ、通常男子たちには男色は(悲しいことに)揶揄の対象にもなりえました。そのため、潜在願望があってもお酒の力を借りないことには、その壁を乗り越えられなかったのでしょう。しかし、せっかく交接に持ち込んだのに、酔いのせいでその快楽の記憶も曖昧なものになったのではないでしょうか。残念なことです。
お酒が過ぎると末梢神経が鈍化して男根が屹立しないことが多いようです。酔って勇気を出したのに、肝心の男根が役に立たないとはこれまた残念無念。
通常男子の諸君、男色は恥ずかしいことではありません。素面で欲望に身を委ねることをお勧めします…とおせっかいながら思う次第であります。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。