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古川柳男色事情走書    南 ツカサ

其の六十六:芳町のお坊さんの事

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  芳町の上客がお坊さんだったことは、これまでにもご紹介してきたところです。今回はその「お坊さん」にまつわる句を見ていきましょう。

よし町へ羽織を着ては派が利かず

  通常羽織を着るのは「お医者さん」です。街中では、医者であると示すことで威張ることも出来ますが、芳町ではそうはいきません。芳町では、お坊さんの方がもてるのです。そのため、医者からお坊さんに化ける人もいたとか。陰間たちの歓心を買うための涙ぐましい努力ですね。

宗旨たずねる芳町の三会目

  同じ陰間を三回指名すると「馴染み客」として扱われます。陰間の接客でお客のプライベートを探ることはご法度ですが、馴染み客ともなると心が打ちとけるのでしょう。これが女色の歓楽街・吉原なら「奥さんはいるの?」などと訊くところでしょうが、芳町では「宗旨(宗教の流派)はどこ?」と尋ねるのです。さて、お客のお坊さんは本当のことを答えたんでしょうかね。何故なら、次の句のようにややこしいこともあったようですから。

芳町の意趣で本寺にいじめられ

  小さいお寺のお坊さんが馴染みになった陰間が、実は本寺のお坊さんの想い人だった、という裏がある句です。本寺のお坊さんは、自分の寺が大きいことを笠に着て横柄に振る舞っていそうなので、陰間にも嫌われていたんでしょうね。陰間にしてみれば、金払いも良く人柄も良い小さなお寺のお坊さんの方が好ましく思い、大切にしただけでしょうが、本寺のお坊さんとしては、面白いわけがありません。芳町での扱いを根にもって、小さなお寺のお坊さんに寄付金をもっと寄越せなどと無理をふっかけていじめたものと思われます。げに恐ろしきは男の嫉妬です。

  お坊さんと言えども、いろんなタイプの人がいるわけで、結局陰間たちに好かれるかどうかは、その人間力によるのでしょう。芳町はひとときの夢を見る場所。どうせ遊びに行くなら、陰間もお客も一緒になって楽しい時間を過ごせることを心掛けたいものです。

コラム「古川柳男色事情走書」著者プロフィール
南 ツカサ(みなみ・つかさ)  Twitter

古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。

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