男色恋愛を行うには、当然相手が要ります。中には、相手のことを想うだけで満足、秘めた恋でいい…と純愛路線な人もいたでしょうが、恋愛感情が高まれば性的欲求も湧きでて来るのが自然の摂理。
江戸時代の男色恋人たちは「念者・念弟」と呼ばれ、思い思われの幸せな関係を結んでいました。お金があり、玄人が好きという人は陰間茶屋遊びを楽しみました。
が、そうでない好色漢たちも存在していました。彼らの標的は御用聞きの少年たちです。素人でけなげに働く姿に萌えを感じていたのでしょうか。御用聞き少年たちがどんな受難を受けていたか見ていきましょう。
「樽拾い」とは、酒屋の奉公する少年のことで、注文のお酒を届けたり、用済みの酒樽や徳利を取りに行くのが仕事でした。
武家屋敷からお酒の注文があったので届けたところ、無理やり破穴(肛門を湿らせずに男根を挿入されること)されたのですね。陰間のように肛門の訓練を受けたわけでもない少年にとっては苦痛以外の何物でもなかったことでしょう。でも、立場ゆえに泣き寝入りするしかなかったであろうことは、想像に難くありません。
抵抗を見せる少年もいました。あの屋敷に行けば尻を狙われる。そんなのいやだ。しかし、奉公人の少年の言い分がどこまで通ったかは疑問です。屋敷の好色漢は、少年の尻に味をしめて少年が徳利をとることを待ちかまえているのです。お店の主人としても、お得意さんをしくじることはしたくない。この句では、少年は逃げおおせたように見えますが、実際は泣く泣く向かわされたのではないでしょうか。
「おやす」とは男根が勃起している状態を言います。「徳利が欲しいならやらせろ」という脅し。もう絵に描いたようなエロおやじとしか言いようがありませんね。徳利を持ち帰らなければ、お店の主人に叱責される。年端もいかない少年に選択肢はなかったでしょう。
いつの時代にも、自分の欲求さえ満たされればいいというロクデナシはいるものです。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。