ナンパとは辞書的な定義によると「面識ない者に対して、公共の場で会話、遊びに誘う行為」となります。人間の欲情は時を選ばないもの。決まった恋人がいるわけではなく、さりとて色街に行くお金もないとなると、てっとり早い手段がナンパです。ナンパが成功するか否かは本人の手腕次第。どんな古川柳が残されているか見ていきましょう。
男娼街・芳町に向かっているというのは、相手も「その気」になっていることが明らかですね。これを放っておく手はありません。「お兄さん、芳町に行くなら俺とどうだい?」などと声をかけたのでしょうか。なかなか成功率が高そうな方法です。
最初は警戒していた相手も、口説かれるうちに心を動かしてきたことがわかる句です。「そこまで言ってくれるなら…」という言葉を引き出しました。ナンパ成功です。声をかけた方も、ホイホイとついてくる男よりも、時間をかけて口説いた相手の方が味わい深く感じられたのではないでしょうか。
おっと、これはいけませんね。下心満載で行うナンパは、誠心誠意口説くのが礼儀というもの。好みのタイプだからと言って、口説きもしないで即押し倒しては、情緒もへったくれもありません。「つかまつり」という固い言葉から、この句は武士の仕業と思われます。古川柳では、「武士」は無粋な存在として扱われることが多いです。
ナンパが成功し、いよいよ交接に入りましたが、それでも油断は出来ません。口を吸い合い、愛撫して、最後の挿入…となった時に「やっぱり無理!」と拒否されてしまいました。男根はやる気満々で弾けんばかりになっています。それを払いのけられては、攻めは途方に暮れてしまいますよね。受けに逃げられ、せっかくのナンパの努力も水の泡。一人淋しく、射精を行ったことでしょう。
それでもめげずに、次なる相手を見つけて欲しいものです。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。