男根にまつわる古川柳は以前にもご紹介しましたが(其の四:男性器考参照)、男子のアイデンティティとなる部位に関する古川柳はまだまだあります。今回も男根(「へのこ」とも言います)についての句を見ていきましょう。
黒い男根が尊ばれたようですね。固さや長さについては以前紹介しましたが、色にも位があって、「最上が黒、次点が赤、最低が白」とされていたようです。
一般に黒い男根は「交接のやりすぎ」「自慰ばかりしている」と言われていますが、実際は男性ホルモンのアンドロゲンが皮膚のメラニン細胞と反応を起こして黒ずませているので、交接技術や回数とは何も関係ありません。とはいえ、黒々とした男根はいかにも強そうで最上位の称号をもらったのでしょう。
これは俗にいう「我慢汁」のことですね。我慢汁は、尿道球腺という箇所で作られる体液で、精巣で作られる精液とは別物です。役割としては、液体の性質によって挿入をスムーズにする、尿道に先に通しておくことで精子が通りやすくするなどがあります。しかし、交接の間にそんな機能を意識する人はいませんよね。早く挿入したくて、涎を垂らしているように見える、というのがこの句の見立てです。
若くて元気な頃はピンっと天井を向かんばかりだった男根で、帯に挟むことも出来たのに、今では……という哀愁の句です。受けにとっては「愛する人の男根」かそれ以外かの区別しかないかと思われますが、攻めにとっては豪快に勃起した男根を誇示したいものなのかもしれません。
和尚は大抵「老僧」とされてますので、彼の男根は弱々しいものだったと想像出来ます(ぶらぶらしているため「提灯」と表現されることもあります)。そんな和尚にあてがわれたのは、菊門の緩い陰間だった模様です。キュッと締まった菊門では和尚の男根ではかなわないと思われたのでしょう。和尚さんの責任(落ち度)ではないのですが……これまた切ない現実の一句です。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。