世の中には「そりゃあそうだろ」と諦めなければならないことってありますよね。傍から見れば、気の毒にと思いながらも「仕方ないよなぁ」と言わずにいられないこと。今回はそんな句を見ていきましょう。
長屋で首つりがあった模様です。何が原因かわかりませんが、とりあえず梁から吊るされた死体を下さなければなりません。こうした時に駆り出されるのは大家です。店子の後始末は大家の役目です。しかし、着物がはだけてへのこもむき出しになっている死体を下すことは、快い体験ではありません。己の役割を呪いながらも、大家は抱えて下したことでしょう。お気の毒様です。
こちらはユーモラスな句。「外科」は「外科医」の意味です。外科医がいじっているのは男根ですね。男根に何か異変があって診察を受けているのでしょう。外科医としても男子の逸物など診察したくないでしょうが、それは患者も同じこと。どんなにいじくり回されても勃起する(おへる)ことはありません。これが美しい陰間にいじられたなら、ガンガンに勃つのでしょうけどね。外科医と患者、双方「なんだかなぁ」と思い合っているのが目に見えるようです。もっとも、外科医にいじられただけで、興奮して勃起する事態になっても困るんですけどね。患者は「こんなおっさんに触られて俺は勃起するのか!?」と驚き、外科医も「俺に触られて勃つなんて……まさか狙われてるのか!?」なんて身構えたりして。淡々と診察が進むのが、一番平和なのです。
この句も男根の診察のようですね。「越前」が「包茎」の異称であることは大丈夫でしょうか。診察をするのに、皮被りでは診にくいと文句を言っている句です。患者も好きで包茎なわけではないんですけどね。男根を外科医に診てもらうだけでも、結構恥ずかしいのに、包茎を馬鹿にされては踏んだり蹴ったりです。早く男根が正常に戻るといいですね。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。