健全な男子であれば、健全な性欲を持っているものです。その性欲を解消するには、一番理想的なのは良き性的パートナーがいることですが、そう上手く相手を見つけられない場合があります。恋人はいない、かといって芳町へ行って遊ぶお金もない、更には街中に行ってナンパする元気もない……といった「一人者」についての古川柳を見ていきます。
いわゆる「朝勃ち」について詠んだ句です。朝勃ちは「夜間勃起現象」とも呼ばれていて、健康な肉体を持った男子であれば、性的刺激がなくても起こる現象です。男根(へのこ)が、浅い睡眠の際に生殖機能を失わないために、筋力を試している状態ともいえます。逆にいうと、この朝勃ちがなくなると、いざ交接を行おうとしても、男根がきちんと勃起せず困ったことになるんですね。言ってみれば、身体を健全な状態に保つための現象なのですが、あえて「一人者」という、性的に恵まれていない人に向けて詠んだところが、古川柳の意地悪なところです。性的に満たされていないから、朝から勃起しているのだろう、という意ですね。朝勃ちは、身体がいつでもスタンバイ出来る状態の証です。一人者くん、めげないでください。
「おへる」とは、男根が勃起した状態のことを指します。こちらの一人者くんは、どういう状況で勃起してしまったのでしょうか。色っぽいことからしばらくかけ離れていたので、何か妄想でもしたんでしょうかね。でも、いくら性的な空想に耽って勃起したところで、挑む相手はいません。しみじみと自分の硬くなった男根を見て、ため息をついている姿が切ないです。
気を取り直して、街中へ出てみました。良き男子とすれ違うと、溜まった性欲は男根に流れ込み、つい勃起してしまいます。それでも、厚着の季節には着物でその状態を隠すことが出来ましたが、薄着の季節になるとそうもいきません。薄い生地では、こんもりとした股間は隠しきれなくなります。やはり性欲はその時々に解消するしかないのでしょうかね。
哀しき一人者くんに、良き相手が見つかることを願わずにいられません。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。