今回は「腎虚」を詠んだ句をご紹介します。「腎虚」とは、東洋医学で下半身の臓器の機能が低下して起こる症状のことですが、古川柳の世界では「過淫」すなわち「交接をやり過ぎてかかる病気」とされています。
どうにも体調が悪いと医者にかかったら「これは腎虚じゃな」と診断された句ですね。自分の交接過多を指摘されたようなものですから、思わず顔を赤らめたことでしょう。閨房での出来事は秘め事ですから、それを暴かれては立つ瀬がありません。
腎虚を患うのは軟派なチャラ男だけではありません。「え?あの人が?」と言いたくなるような堅物でも、やることをやっていれば罹ってしまうのです。人は見かけによらぬものです。
好みの男子に熱い視線を送って、無事ベッドイン出来たものの、自分の腎虚のせいでコトに至れなかった句です。気持ちは昂っていても、男根がいう事を聞かないのであれば仕方ないですね。相手の男子にも「出来ないくせに誘うんじゃないよ!」と罵倒されたかもしれません。お気の毒です。
「かかるなり」とは、交接を挑むことですね。腎虚でしばらくおとなしくしていた男子が「医者が治ったと言った」とさっそく腰を上げた模様です。腎虚でひどい目に遭ったのに、治ったとたんまた交接に走るとは……好きなんですねぇ。
腎虚は死に至ることもあったようですね。怖い病気です。せっかく美しい恋人がいるのに、存分に交接を楽しめぬまま亡くなってしまうのは無念でしょう。あ、存分に楽しんだから腎虚になったのかもしれませんが。
過ぎたるは猶及ばざるが如し。交接もほどほどに楽しむのがよろしいようで。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。