御用聞き少年が狙われる句については、これまでにもいくつかご紹介してきました(其の九、其の三十六、其の三十七、其の三十八)。しかし、御用聞き少年も、いつも襲われたり、逃げるばかりではありません。今回は、御用聞き少年たちの逆襲の句を見ていきましょう。
御用聞きの途中で、口説き口説かれる二人組を見かけたのでしょう。人が人を口説く時は、あれこれと甘い言葉を囁き、好色な笑みを浮かべて、さりげないボディタッチをするなどのテクニックを使ったりします。傍から見たら、少々間抜けなことを真剣にやっているわけです。それを御用聞き少年は、にやにやと見物していたと思われます。気付かれて、叱られはしましたが、舌をペロっと出しながら、その場から離れたのではないですかね。
御用聞き少年のあからさまな意地悪です。御用聞きに行った家で、何やら怪しげな雰囲気が漂っているのを察知して、様子を窺っていました。口説く男も口説かれる男も、だんだんその気になって「いざ、ヤリましょう」という場面になって、「よう!」と声をかけたというのです。気分は削がれるわ、バツが悪いわで、おそらくその日の交接はうやむやになったことでしょう。
こちらは、交接真っ最中に訪れられた男の様子を馬鹿にしている句ですね。御用聞き少年がやってきても、男根を抜かずに「何を見ている! 失せな!」と叱ったようですが、締まらないことこの上ありません。御用聞き少年の登場にもめげずに交接を続けたあたり、根性のある男かもしれませんが、こんな風に言い触らされては、面子丸つぶれです。
これは告げ口の句。もしかしたら、お店の主人の想い人を別の奉公人がヤッてしまったのかもしれません。それを目撃した御用聞き少年(小僧)が、その奉公人に叱責を受けた時に、鬱憤晴らしに主人に伝えたのでしょう。その奉公人の運命や如何に……ですね。
御用聞き少年もいつもいつもか弱い立場でいたわけではなかったことがお分かりいただけたでしょうか。少年期は、多感で好奇心も旺盛な時期です。大人顔負けの行動を、しれっとやってしまうことも多くあったのでしょうね。
古川柳愛好家。川柳雑誌「現代川柳」所属。